永い延長戦

2023年:「何でも見てやろう」

マイルーム

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 今までここに曖昧なことしか書いてこなかった。曖昧なままにしていたら、人に伝わりきらないし自分も自分を分からないままだろうな。だからこれからは鮮明に書いていこうと思う。

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 最近のことを話す。

ついさっきまで高3だった。大学受験をした。実家を、東京を、捨てるためだけに勉強を頑張ってきて、入金さえすればその道を選べるところまで辿り着いたのに、気づいたら権利を振り捨て東京での進学を決めている自分がいた。後悔した夜は何度もある。でももう後悔しない。いつかこのことを一顧だにせずいられる日がくるように生きる。憎くて孤独なだけだと思っていた東京に、いつの間にか信じられる仲間ができていて、だから自分は東京を選ぶことができたんだと思う。

 

はじめてのマイルームを手に入れた。18歳にして。それが最初の写真。「次の家に引っ越したらあんたに子ども部屋作ったるから」と言われて今の家に越してきたのが10年前で、それから10年間この部屋は自分のものにならなかったし、家族の誰一人が立ち入ることもなかった。ずっと物置。引っ越し前に封じた荷物が、ずっとそのまま。

今突然開放されたのは、疾病がありあまる時間を与えてくれたおかげだ。まだ部屋の一隅だけなんだけれど。いつも「時間がない」といって体よく掃除を拒み続けていた母親も、ここに至ってとうとう掃除に腰を入れてくれた。母のこういうだらしなさ・管理能力のなさ、そしてこの性格の自分への伝染を恐れたからこそ自分は脱出を目指していたはずなんだけど、それはまあいい。

はじめて自分の城を得て、暮らしぶりがどう変わっていくか見るのが楽しみだ。置き場所がないからと今までセーブを強いられてきた物欲が、破裂するかもしれないしそうしないかもしれない。

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健康維持を名目に家を抜け出す。はたとあなたに出くわす。次会えるのは1ヶ月後、なんて甘い話ないかもしれないね、今度あなたに会うのはいつだろう。4月15日の自分はまだこの状況を受け入れる余裕を持っている。書を読もう。ネットフリックスに浸ろう。それでもだめなら通話しよう。通知タブにあなたがいるのが嬉しいから、あなたからのLINEをちょっと未読スルーした。宇多田ヒカルが肌寒い夕暮れの部屋の隅っこに暖かさを与えてくれる。