永い延長戦

2023年:「何でも見てやろう」

河川敷に行くだけのつもりが川の河口まで行ってしまった

 明日は友だちと出かける約束をしているというのに、春休みの間引きこもり通して日陰に慣れきったこの状態のまま明日を迎えてしまってはまずい。準備に手間取って遅刻するかもしれない。と思って社会復帰のリハビリくらいのつもりで近所の河原まで自転車を走らせた。橋梁の下の日に当たらないところあたりに落ち着いて、存分にのんびりして帰ろうと思っていた。

 

けれどもいざ走り出すと結構調子に乗ってくる。ちょうど3月の初めにメンテナンスをし終えたところの自転車は、軽く漕いだだけでぐんぐん走る。河川敷に着いて、そこから下流に進路を向けた。雲量が30%くらいの空模様も絶妙だし、これより少し暑くても少し寒くても出掛けたくならないようなちょうどいい陽気をしていた。今までアスファルト敷きだった道が突然未舗装の砂利道に変わったりと苦戦しながらも止まらず、これは河口まで行けるんじゃね、と思いついてしまった。自分のひらめきに興奮しているので、グーグルマップで河口までの残り距離を確認したりもしない。マップを開いていたら多分諦めていただろうし、それで一気に冷めて家まで引き返していたかもしれない。今日のは明日の外出のための予行みたいなもんなんだから、無駄に体力を使わず引き返しておいたほうが良かったんだけどなあ。ともあれ、自転車通行禁止の箇所やら工事中の箇所やらで通せんぼを食らい、右岸へ左岸へ行ったり来たりしながら終点までたどり着く。
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2階建てアパートくらいの高さがありそうな羽田大鳥居がサイクリングロードの終点。自転車への思いやりの欠片もないような砂利道まで含めてサイクリングロードと総称しているのは面白かった。自転車が数台と男性が数人、この鳥居を囲むようにぽつりぽつりと存在していた。今では羽田空港となっている土地にかつて存在していた神社の名残らしい。


先客の男性の真似をして少し休んでから羽田空港にも行こうとしたけど、空港に至るまでの道のどこもかしこもが工事中でどこを走れば空港に着くのか分からない。あと、第一ターミナルとか第二ターミナルの違いも分からない。それで面倒くさくなってやめてしまった。羽田から少し上流に戻ったところでイートインのあるパン屋さんを見つけて、そこで昼食を食べる。店を出たら夕方になっていて、今まで高揚で見えなかった疲れが一気に来た。行き当たりばったり、家からの距離なんて一切考えていない思いつきの小旅行の弊害で、復路のための体力が既に残っていない。だけど走り出さないとどんどん夜が近くなる、思いつきで河口まで数十キロも走る勇気はあっても、さすがに見知らぬ道を自転車のライトだけ頼りにして走る勇気はなかった。急き立てられるように走る。支流か浄水処理された水か、なにがしかの水路が川と合流するところには5メートルほどの水門が立っていて、その多様な材質とデザインから建築された年代が何となく推測できてたのしい、レンガ造りのもあれば、コンクリート打ちっぱなしのものもあった。

 

すっかり暗くなってから家に着く。事前に下調べしておけば少しは楽だったろうに、と嘆きながらサイクリングロードについて調べる。実際に往復し終えてから見ると事実とは思えないような情報がわらわら載っていた。この一帯は未舗装です、ここからここまでは通行止めです。それで、もう一度河口まで行く気になった。今度は道路事情を記録しながら行って、得た情報をインターネットに投下するんだ。意欲がむくむく湧いてくる。悪い気はしない、やれるものならやりたいと思う、だけどきっと2度目は上手くいかない気がした。河口まで自転車で行くなんて無謀は、恐らく突発的だったからこそできたものだ。浅慮のおかげで、ようやく春休みに思い出と呼べそうな思い出ができた。今日の疲れで明日起きられない、なんてことさえ無かったら、自分の浅慮を褒めてやりたいと思った。