永い延長戦

2023年:「何でも見てやろう」

真っ白

もっと真っ白。真っ白のなか書き上げる感覚を忘れちゃいけない。世の中素敵な感覚を持つ人がいて、見かけるたびに自分はその人を模範としその人を目指さなければならないような感覚に囚われる。その人の生き方を知って、その人の考えに触れて、その人のように文章を書いていたくなる。だから素敵な人に合うたび自分は苦しい。自分は皆人のどこかしらをこけにして見下して馬鹿にして、心の中だけででも自分の優位性を信じてそれにすがっていたい。うつくしい、自分の世界を壊しにこないで。一方で自分は、自分では敵わないような人に出会って裏付けもないような自らのプライドが打ち崩されるたび、虚像に唾を吐きかけられるたび、快感に打ち震えているものでもある。自分の弱さと戯れている。

注目されたい。人生の主役になどなりたくない。構われたい。構われたくない。有意味でも無意味でもない人生の中でずっと自分を保っていたい。食べれる。食べれない。寝れる。寝られない。話せる。話せない。虚栄を二層にも三層にも重ねてできた自分。失敗はより醜く、成功はより美しく。どうしようにも戻れない誇張の末に今がある。注目の麻薬。一瞬の快楽、それを塗りつぶすように尾を引く後悔。真っ白でいたい、自分は。快楽も後悔もそこにないような、真っ白で生きていたい。